別れ話 | まくらごはん
別れ話

別れ話

すっかり枯れた葉が、ひらひらとゆっくり落ちるのが見えた。
おれは目を見開いた。それと同時に、自分の拳に力を入れてみた。時が止まったと思ったのだ。ぐっと力を入れてみると、伸ばしたままの爪が、手のひらに食い込んだ。時は止まっていなかった。しかし今確実に、おれの中の時は止まっている。息を吸った。

「冗談だろ?」

開けたままの口が、ひくひくと動いている。間抜けな顔をしているかもしれない。頭の中を整理したい。そう思っているのに、実際のおれの頭の中は疑問符で埋め尽くされている。なんで?どうして?冗談だろ。そんなつまらない冗談。笑えない。いつものように胸倉を掴んで、脅してやればいい。足が動かない。

おれとカラ松は、恋人同士だ。家族で兄弟で男同士で、それでも、この世界でたった一人の愛しい恋人。初めて手を繋いだ時は緊張して、手汗がなかなかひいてくれなかった。抱きしめ合った時だってキスをした時だって、身体を重ねた時だって。いつだって緊張して、心臓が壊れそうで、頭がおかしくなりそうで。触れる度に暖かさに安心して、泣きそうになった。ああ、好きだ、って。この世界で、誰よりも、一番に好きだって。死ぬまで一生、一緒にいるんだって。

「ごめん、一松」

兄の言葉にはっと意識を戻された。兄は、僕のことを見ていなかった。今日は一度も目が合っていない。いつも目を見て会話するって、話していたのに。ごめんって、どういうこと。

「おれのこと、好きじゃなくなったんだ」
「…違う」
「おまえはおれのこと、もう、好きじゃないんだよ」
「違う!!」
「じゃあなんで!!」

なんで別れるなんて言うの。続けた言葉は震えてしまって、情けない声になって外に出た。おれのこと、あんなに好きだって、愛してるって。おれも最近やっと、お前に心から愛されているんだって、自信を持てたのに。どうして、どうして?息が上がる。どうして。どれだけ問い詰めても、ごめん、としか言ってくれない。

「一松、さよならだ」

待って、待って!
急いで伸ばした手は、兄の服の裾を掴んだ。やった、間に合った!そう思った。そう思ったのに、構わず兄は僕の手をふりはらった。そのままこちらを振り返って、何かを言ったようだった。でも何を言ったのか、僕の耳には届かなかった。なに、なんて言ったの。最後のお前からの、言葉がさよならなんてやだよ。いま、お前は僕に、なにを伝えようとしたの。少し微笑んで、そのまま走る。追いかけようとして、すぐに躓いた。膝を思い切り打って、顔が歪む。顔を上げると、もう兄の姿は見えなかった。どこかの角を曲がったのだろうか。もしそうなら、まだ間に合うかもしれない。それでも、僕の身体は動かなかった。また、時が止まってしまったのだ。
枯れて地面に落ちた葉を、思い切り踏みつけた。余計な力まで込めて踏みつけられたそれはばらばらになり、冷たい風に吹かれて飛ばされた。足元にはもうなにもない。僕たちの関係も、あいつの優しい温もりも、もう何も残っていなかった。手の平には、食い込んだ爪の痕が残っていた。僕はこれから、どうやって生きていけばいい?気がつくと涙が流れていて、視界がぼやける。ただただ、虚しさだけが残った。




あなたはいちまつくんの「ちょっと待て……冗談だろ?」という台詞を使った1コマ漫画を描きます。

という診断をお借りしました。からまつくんはなぜいちまつくんに別れを切り出したのでしょうか。わかりません…。基本ハッピーエンドばかりなので、こんな中身のない内容でもかいててめちゃくちゃしんどくなりました。

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